私はこれまで、葬儀の仕事を通じて、たくさんのご家族のお別れに立ち会ってきました。
一つとして同じお葬儀はありません。
ご家族の数だけ思い出があり、故人様への想いがあり、それぞれのお別れがあります。
その中で、年月が経った今でも、私の心に残っている家族葬があります。
それは、あるおじいちゃんと、小さなお孫さんのお話です。
おじいちゃんが大好きだった拓郎君
拓郎君は、おじいちゃんが大好きでした。
夏になると、一緒にセミを捕りに行きました。プールにも連れて行ってもらいました。
自転車に乗れるようになるまで、何度も練習に付き合ってもらいました。キャッチボールもしました。
拓郎君にとって、おじいちゃんと過ごした時間は、何か特別なことをしているというより、いつもそこにある、楽しい時間だったのだと思います。
ところが、その大好きなおじいちゃんが亡くなりました。
「もう、おじいちゃんには会えないんだよ」
まだ幼い拓郎君にとって、「人が亡くなる」ということを理解するのは簡単ではありません。
お母さんは拓郎君に、おじいちゃんが亡くなったこと、そして、もう今までのように会うことができないことを話しました。
その時、拓郎君は、おじいちゃんとの思い出を一つずつ思い出したそうです。
プールへ連れて行ってもらったこと。
自転車の練習をしてもらったこと。
キャッチボールをしてもらったこと。
そして、拓郎君は泣きながら言いました。
おじいちゃんから、たくさんのことをしてもらった。でも自分は、おじいちゃんに何も返してあげられなかった。幼いながらに、そう思ったのでしょう。
そんな拓郎君に、お母さんは言いました。
おじいちゃんへ書いた手紙
お母さんは拓郎君に、「おじいちゃんに伝えたいことを、手紙に書いてみたら?」と話しました。
拓郎君は、おじいちゃんとの思い出を一つひとつ思い出しながら、手紙を書きました。
難しい言葉でも、立派な文章でもありません。
そこに書かれていたのは、大好きなおじいちゃんへの、拓郎君の素直な気持ちでした。
そして、お葬儀の日
ご家族が見守る中、拓郎君はおじいちゃんへの手紙を届けました。
一緒に遊んでくれたこと。いろいろなところへ連れて行ってくれたこと。たくさんの思い出を作ってくれたこと。
そして最後に、拓郎君はおじいちゃんへ伝えました。
本当にありがとうね。」
私は今でも、その時のお葬儀の空気を覚えています。
悲しいはずのお別れなのに、そこには悲しみだけではない、何とも言えない温かな時間が流れていました。
「ありがとう」を伝える時間
私は長く葬儀の仕事をしています。
けれど、この家族葬は今でも忘れることができません。
なぜ、これほど心に残っているのだろう。時々、そう考えることがあります。
拓郎君がおじいちゃんに贈ったものは、高価なお供え物でも、特別なものでもありませんでした。
その気持ちでした。
でも私は、それこそがおじいちゃんにとって、何よりうれしい贈り物だったのではないかと思っています。
そして、この出来事を通して、もう一つ教えてもらったように思います。
誰かにしてもらったことを覚えていること。
そして、その気持ちを「ありがとう」という言葉にして伝えること。
それは大人だけではなく、子どもたちにとっても大切な経験なのかもしれません。
私が家族葬で大切にしたいこと
お葬儀というと、祭壇や費用、人数、形式といったことが、どうしても先に考えられます。
もちろん、それらも必要なことです。
でも私は、もっと大切なものがあると思っています。
家族で思い出を語ること。
そして、今まで言えなかった「ありがとう」を伝えること。
お葬儀のかたちは、ご家族によって違います。
何日間お葬儀をするか。どれだけ立派な祭壇を飾るか。私は、それだけでお葬儀の良し悪しが決まるものではないと思っています。
一日葬であっても、家族だけの小さなお葬儀であっても、大切な人を想い、思い出を語り、きちんと気持ちを伝えることができれば、そのご家族にとって、大切なお葬儀になる。
私はそう考えています。
だからこそ、私たちがお手伝いする一日葬も、「一日だから簡単に済ませる」というものにはしたくありません。
一日葬だからこそ、ご家族が故人様を想い、思い出を語り、「ありがとう」を伝えられる時間を大切にしたい。
それが、私が家族葬をお手伝いするうえで、大切にしていることです。
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